大学卒業し新卒者として現在も勤務する会社に入社しました。私が入社した時代はまだ大卒者の就職活動も厳しく、入社後も長時間の残業や、今で言う「パワハラ」の近い言動も多く見られていました。入社から15年程経過し、部下を持つ立場になりましたが、新入社員として入社してくる若い社員との接し方に悩んでいます。
「私たちの時代」は、言われなくても「あたり前のこと」として行っていた仕事や作法も、現在の若者にとっては「あたり前」ではなくなっており、私が立場上言わざるを得ません。
何度言っても直らない事柄については、叱らざるを得ません。ただ、若い社員を叱るたびに、自分たちとは異なる「常識」で育った世代に、露骨に嫌な顔をされることに悩み、叱った私自身が傷ついています。
どうしたらよういのでしょうか。
このクライアントのお悩みは、職業観や「常識」の異なる新入社員に対する指導についてでした。
2000年代前半では「一般的」と見なされていた職場のマナーや職業観は、現在の❝若者❞にとっては「一般的」とは思われない事柄が多くあります。
例えば、労働時間や拘束時間に対する「常識」です。2000年代前半までの伝統的な日本的職場慣行では、とくに新入社員は、始業時間の20~30分までに出社し、定時後も上司が帰社するまでは「帰ってはいけない」雰囲気がありました。上司や先輩よりも早く出社し、遅く帰社するという日本的職場慣行は、「家族的経営」とか「家父長制」といった日本社会に根強く残る儒教的伝統に由来していました。
日本社会に根強く残っておりました「家族的経営」や「家父長制」といった伝統も、近代的な労働法制の徹底や個人の職業観や人生観の変化によって、多くの企業で薄らいでいます。
労働法制の徹底については、労働時間管理の厳格化がますます強まっています。例えば、以前は、上司よりも先に帰ってはいけないような雰囲気が漂う職場で、定時を過ぎても職場に残り「サービス残業」が「一般的」に行われていた慣行も、監督官庁が「職場に社員を残らせていれば、理由に関わらず残業とみなし、残業代の支払いを命ずる」という強い指導を全国で数年に亘り行った結果、定時を過ぎれば帰社するという「常識」が広がりました。
また個人の職業観も、新卒者として入社した会社に定年まで勤め上げる「終身雇用」を望まず、転職を伴いながら、キャリア形成を行うことが一般化してきました。若い世代を中心として転職することが「普通」という通念が広がるにつれ、かつては転職に対して抵抗感を持っていた世代も、その考え方を改める方向に進んでいます。
とはいえ、若い世代が新入社員として入社してきたとしても、これまで長い時間を掛けて培われてきた職場風土は、その風土を形成してきた現在の役員や管理職層であるため、直ぐに変わることはありません。
ご相談者の悩みの中心は、本来は変えるべき❝古き良き時代の❞の慣習を一人の力では直ぐに変えることは出来ず、本心では❝悪しき❞職場慣習を若い社員に強制することを拒みたいと思う気持ちと、自身の上司からのプレッシャーに負けて、これまで通りの職場慣習に従うように叱るという行為とのジレンマにありました。
解決策としては、ご相談者が❝悪しき慣行❞を変えたいという気持ちが強いことが「対話」を通じて明らかになったため、職場風土を少しづつ変えていく努力と、職場風土が変わるまでの間、どうしても若い社員に指導しなければならなくなった際は、「これは本来は今の時代と適合しなくなってきている慣行ではある。私としては変えたと思っている。しかしながら、長い時間を掛けて培われてきた慣行というものは、直ぐには変え難い。今は職場が変わる過渡期であることを分かって欲しい。だから、❝悪しき慣行❞と思っているかもしれないが、今は職場のモラールを維持するためにも、従って欲しい」と本心を語ることで、ご相談者自身がジレンマで苦しむことを回避頂きました。
自宅から通える大学に進学し、就職も自宅から通える「安定した」会社を選び入社しました。
入社の動機も、自宅から通えて、社歴も長く、地元の評判も良い「安定した」会社だからでした。
就職活動をしている時は、特段「やりたいこと」は思い浮かびませんでしたが、仕事を始めてみれば、自然とその会社内で「やりたいこと」が見えて来るだろうと思っていました。
入社して直ぐに総務・経理部署に配属され、定められた規則の下、事務業務をこなしていました。
入社してから数年が経過しましたが、仕事を覚えることに大変だったのは初めの1年程度で、その後は「流れ作業」を行う感覚で一日一日が過ぎ去っていきます。正直、仕事に対して熱意ややる気はあまりありません。
先輩や上司の仕事を見ていても、規則に従って「流れ作業」を繰り返しているようにしか見えず、私も数年後も数十年後も同じような「作業」をしているのかと想像すると不安しかありません。
折角「働く」のであれば、「やりたいこと」をしたいと思います。とはいえ、「やりたいこと」が明確になっている訳ではありませんが…。
「やりたいこと」を見つけられないこと、でも、今の仕事を続ける気持ちになれないこと、この大きな二つの悩みと不安をどのように扱ったら良いか分かりません。
このクライアントの悩みは、社会人をスタートさせた初職において、規則に則った事務作業にやりがいを感じられず、やりがいある仕事を求めていることでした。
クライアント自身もやりがいある仕事=「やりたいこと」がどのような仕事であるか、イメージが固まっておりませんでした。
そこでまずはこのクライアントにとってやりがいある仕事とはどのようなことかを明確化させていきました。
「対話」を続ける中で、規則に則った事務作業において、興味関心が湧いた「書類」が、顧客からのニーズに沿って作成される「要件定義」であることが分かりました。
IT企業における「要件定義」(書類)とは、顧客のニーズをヒアリングし、構築するソフトウェアの機能や性能を落とし込んだ書類のことです。
さらに、なぜ「要件定義」(書類)に興味関心を抱いたのかを紐解いていった結果、顧客のために、顧客が望むシステムを提案することで、顧客の「役に立ちたい」、顧客の「役に立っている」ということを実感したい、という働くことへの期待があることが分かりました。
このクライアントにとっては、やりがいのある仕事=「やりたいこと」とは、自分が行った仕事で誰かの役に立っている実感を獲得したい、ということでした。
「やりたいこと」=仕事で誰かの役に立っている実感を得たい、このことが明確化された後は、それを具体的な「目標」まで落とし込むことについては比較的容易でした。
誰かの役に立っている実感を得たい、という働くことへの期待は、現在所属している会社においても担当部署を異動することで叶えられることが分かり、「要件定義」作成に携わる技術営業部門への異動を具体的な「目標」に設定しました。
具体的な「ありたい自分」、そのために成すべきこと、つまり「目標」が具体的に定まれば、そのために必要な知識であったり、資格も明らかにできます。
クライアントには、技術営業部門への異動の実現に向けて、ITに関する知識の習得を行って頂くことと、「現在の部署において完璧に現在の仕事を行って頂く」ことをお願いしました。
IT知識の習得は求められる人材になるための必須条件と言えますが、一方で、人事異動は「人が行うこと」であるため、現在の部署での仕事振りの評判も小さくはない「要件」となりえます。
「今の部署の仕事が嫌だから異動したいらしい」という噂や評判で、望む仕事を実現できなかったケースはゼロではありません。
1年後、このクライアントは、IT知識の学びと、所属部署での仕事にも一切手を抜かず取り組んだ結果、「やりたいこと」が叶いそうな部署への異動が決まりました。
このクライアントのケースでは、「やりたいこと」が全くイメージ出来なかったところからスタートし、望む仕事の明確化、目標の設定、目標達成に向けて各課題のクリアを経て、納得できるキャリア選択を行われました。
幼少期から漫画や雑誌が好きだったこともあり、学校卒業後は自宅から通勤できる10人規模の印刷業に入社しました。
初任給だけでは一人暮らしをすることが難しい水準の給与額でした。数年勤務しましたが、給与はほんの僅かづつしか上がっていません。未だ自宅を出て、一人暮らしをできる給与水準には達していません。
今の会社に勤め続けて、将来どのような生活ができるのかを不安になり、先輩や上司にそれとなく給与水準を尋ねてみたところ、私が期待していた将来の年収とは掛け離れていました。
近い将来では一人暮らしをして、その後家庭を持ち、家も自分で建てたいと思っていますが、残念ながら先輩や上司の話しでは難しそうなことが分かりました。
将来望む生活を行うために、現在の会社に勤め続けるか、それとも転職するか、その他の道があるのか、と今後のキャリアについて悩んでいます。
このご相談者の悩みは、現在所属している会社に今後も勤続をし続けたとしても、先輩や上司の年収を参考にしたところ、希望する生活とそのための年収には及ばない可能性が高く、今後の働き方について悩まれている、といったものでした。
日本における雇用慣行は、学校を卒業して会社に入り、そのまま長期勤続を重ね、能力や経験に蓄積に応じて賃金も上昇していくというものでした。
高度経済成長から安定成長を経て、長らく続く低成長期に苦しむ日本では、働く人の賃金の上昇率が世界を見渡しても下位に位置づけられています。多くの企業で、1990年代後半から大きく賃金構造を変えられずにいます。
ご相談者が尋ねた先輩や上司の年収は、その会社の賃金規定・ルールにおおよそ則った額と思われますので、ご相談者の数年後、数十年後の年収を推論する根拠としては妥当なものでした。
その上で、望む生活を送るために必要と考える年収と、将来得られるであろう年収との乖離があった場合、幾つかの取りうる方向性があります。
最もオーソドックな方向性としては、現在勤務する会社内で年収の高いポストに就くことですが、ご相談者の会社は10人規模であり、ご相談者が望む年収を得られるポストは社内には見つけられませんでした。
もう一つは、会社に勤務することをやめて、自ら起業する、会社を立ち上げる方向です。起業する方向性は、長期的な視野においては検討の余地があるものの、短期的には自ら業を興すにはまだ足りないものが多くあることに気づかれ、将来的な目標ということで、現在の選択肢から外しました。
現在考えられる選択肢としては、年収が増加する可能性が高い会社への転職が有力な方向性として残りました。
ご相談者が20代前半であることも転職という選択肢が有効な理由の一つに挙げられます。
日本の雇用慣行は一部崩れたとは言え、未だ若年者を採用し、長期勤続を保障し、会社を牽引する基幹社員として育成する慣行が広く残っています。
この雇用慣行のため、転職市場では若年者へのオファーが多く見受けられる一方、中高年層への転職オファーは若年者に比べると件数は限られてきます。
ご相談者の望む生活とそのための年収の確保のための転職活動に向けては、現在の会社で培った知識や経験を一度「棚卸」し、転職先でも「求められるスキル」であったり、「知識」であったりを整理頂きました。
ご相談自身の「働く力」の「棚卸」の過程で、自社だけでしか求められないスキルや知識が比較的多かったこと、企業横断的に求められるスキルの蓄積が十分とは言えないことに気づかれ、早急に転職するのではなく、現在の所属企業において「他社でも求められるスキルや知識」を修得することを優先させることとなりました。
「他社でも求められるスキルや知識」の中には、印刷に関連する資格の取得も含まれました。
直ぐに取り組むべき課題、つまり明確な「目標の設定」ができた後は、その目標の達成に向けて、1週間ごとの課題、1ヵ月ごとの課題、1年単位の課題を定め、目標達成の可能性を高めて行かれました。
就職先を決める際に「安定した会社」に入社することを強く薦めてくる両親の紹介で、現在の会社に就職しました。
現在の会社はエネルギー関連の卸売りを行っており、とても安定しており、社歴も長いです。仕事の内容としても、特定の会社との継続的な取引ということもあり、定型的で落ち着いた事務作業です。
会社そのものと仕事内容には満足しているのですが、悩みは人間関係です。
私は「仕事」をする場所としてしか職場を見ていないのですが、先輩や上司は❝昔ながら❞の家族的な接し方をしてきます。
私の個人的な経歴、趣味、プライベートな人間関係まで、細かく尋ねてきます。数十年勤務している方々からすれば、家族なのだから答えて「当然」のことと捉えられているですが、私には会社の上司や先輩にプライベートのことまでを詮索されることが苦痛で仕方ありません。
この会社での処遇や仕事内容には満足しているだけに、どうしたら良いのか悩んでいます。
このクライアントの悩みは、プライベートのことまで詮索している上司や先輩への対応をどのようにしたら良いか、というものでした。
この悩みを解決するために、まずは現状の分析から行いました。
社歴が長い会社ということで、これまで「日本的経営」と称されてきました、会社組織を「擬似家族」と見做し、労使関係を安定させ、部署間の連携を強化し、チーム内の生産性を向上させるための様々な労務管理施策が、今でもしっかりと「社風」として根付いている職場であるとの印象でした。
「擬似家族」は、長期勤続が「当たり前」の時代背景の中では有効に機能していた面が大きかったのですが、現在の個人化が進む時代背景においては、「疑似家族」の有効性のみを主張することが難しくなってきています。
クライアントが勤めておられる会社は、とても長い時間を掛けて、主として生産性を向上させるために「疑似家族」的な濃密で良好な人間関係を築かれるように、様々な施策を取り入れられた結果、従業員にとって「勤務先」と「プライベート」の領域が曖昧になってしまっている状況であると解釈できます。
問題は、このような「家族的」な社風と、クライアントのような個人化の進んだ若い世代との「働くこと」に対する意識のギャップがあることです。
現在の若い世代は、「働くこと」とプライベート(空間)を厳密に分ける傾向が見られます。伝統的な「家」の文化が希薄になっている世代とも言えます。
「家」文化の意識が希薄になり、逆に、個人主義、個人化が優勢となった世代にとっては、会社内の「擬似家族」の雰囲気に馴染めないことは、ある面では当然と言えます。
自らが望まない状況に置かれた際に、取りうる行動は様々なですが、会社内における社風や文化の違いに対応する行動としては、「逃避」が有効と思われます。
このケースでは、プライベートのことを含む様々な詮索に対して、否定するのではなく「逃げる」ことを勧めました。
「逃避」を勧めた理由としては、クライアントとの「対話」を通じて、職場は「生活の糧を得る場」であることをしっかりと明確化されたことから、社風を変える必要もなく、先輩や上司に変わって欲しい訳でもなく、ただ今の「生活の糧を得る場」を失わないことと、詮索される苦痛から解放されるためには、自らその場から自然といなくなる「逃避」を続けることを勧めました。
長い時間を掛けて醸成された「社風」というものはそう簡単に変わるものでも、消えるものでもありません。
社風に個人が抗うことは現実的ではありません。
答えは、クライアントの心の中に既にあった「ここ(会社)は生活の糧を得る場」である、ということに尽き、上司や先輩からの詮索に対して、相手(やこれまでの社風に)を気遣いながらも、答えることはせず、その場から立ち去ることを続けて頂きました。
就職活動の際に、先生から薦められて現在の勤務先に入社しました。学生時代から何事に対しても一生懸命に、真面目に取り組む方で、会社に入っても私なりに正義感を持って働いてきました。
学生時代もそうでしたが、自分が関わっている組織やグループの「ためになる」と思ったことは、率直に発言したり、行動をしてきました。会社に入ってからは、会社のためや、所属する課・グループの「ためになる」と思ったことを臆せず、提案し続けて来ました。
ところが、入社して20年弱経過した現在、私よりも後に入社してきた後輩が私を抜かして「課長」のポストに就きました。現在の私から見れば、後輩ではありますが、会社の組織上は上司になってしまいました。
後輩は私のように会社のためになる改善プランの提案や、自分を犠牲にしても会社のために働くということはしてきませんでした。
ですが、会社が管理職のポストに選んだのは、私ではなく、無難に仕事をこなしてきた後輩でした。
(自分なりに)一生懸命会社のために働いてきた私ではなく、無難に上司に言われたことだけをこなしてきた後輩が課長に選ばれたことで、私は会社にとってそれほど「必要ない」存在である、と突きつけられた気持ちです。
悔しさと、空虚感で、今後どのようにすべきかを悩んでいます。
このご相談者の悩みは、自分なりに「会社のため」に働いてきたにも拘わらず、管理職のポストである「課長」には、無難に仕事をこなしてきた(とご相談者が考えられている)後輩が選ばれ、空虚感に苛まれている悩みでした。
まずはご相談の全体像を把握するために、ご相談者の会社の処遇決定に関わる人事制度について、「対話」を通じて明らかにしていきました。
ご相談者の会社は、オーナー(株式の所有者)と経営者(多くは社長)を同じ方が務める、いわゆる「オーナー企業」でした。
会社内での昇進、昇格や、役員への登用を決めるのは、オーナー兼社長がほとんど一人で決められることが分かりました。
ご相談者の会社は50人規模であることから、オーナー兼社長の方が、従業員一人ひとりの働きを、自ら見て回り、「自らの価値観」に従って、評価しておられました。
大規模組織となった会社においては、社長一人が全従業員を見て回ることや、一人ひとりについて評価することは難しいことから、秩序立った人事処遇制度の下で昇進、昇格が決められることになります。
日本における伝統的な人事処遇制度においては、大きく3つの考課軸が採用されていました。
①能力考課、
②業績効果、
③情意考課です。
①能力考課は、仕事を行う能力がどの程度であるか、に基づいて評価する軸です。多くの企業では、勤続年数が長期間になれば、その分だけ能力も伸長していると見做して、毎年能力考課部分を加点し、その加点分だけ賃金も上昇させるという用い方を行っておりました。「年功序列」と呼ばれる、毎年賃金が少しづつ上昇する賃金制度を論理的に説明する際には、この能力考課に基づいた説明がなされることが多いです。
②業績効果は、定められた期間における従業員個人や所属グループの業績=成果・成績に連動させる評価軸です。業績考課は予め数値として定められた目標に対して、個人やグループの成果がどの程度だったかを評価する軸であることから、数値化が容易な職種については最も客観的で妥当性が高い評価軸と言えます。但し、必ずしも数値化することが難しい職種、例えば総務・人事や経理といった間接部門については、業績考課のみでは会社への貢献度が測り難いという課題もあります。
③情意考課は、現在では評価軸として公に採用する企業は少なくなりましたが、会社への貢献意識等を評価する軸です。日本の企業では、新卒者を一括で採用し、長期勤続を経て、管理職や役員に登用され、定められた定年と伴に会社を退社する、「終身雇用」が雇用慣行として広く採り入れられていました。「終身雇用」の雇用慣行においては、会社の中枢を担う従業員に求められる重要な資質として、「会社への貢献意識」を問われていました。情意考課で評価されたのは、従業員一人ひとりの「会社へ貢献する気持ち」でした。
ご相談者の会社では、従業員を公正に処遇するための評価軸は明確に示されておらず、オーナー兼社長の心の中の評価基準で決めておりました。
製造業の会社で、現場作業という仕事における評価については、①能力考課が最も妥当性ある評価軸と思われますが、技術・技能が高い従業員が適正に評価されていたかというと疑問が残るようでした。②業績考課については、係や部ごとで業績を判断していなかったため、評価軸としては使用されていなかったものと思います。
最後の③情意考課ですが、この点がご相談者にとっては最も評価されて然るべきと考えていた評価軸であったものが、後輩に管理職のポストが与えられたことで、信じていた信念が揺らいでしまっておりました。
ご相談者との「対話」の中で、所属されている会社は、主要取引先からの発注を基に生産を行い、社長自身も「変革」を求めていないことが分かってきました。
長年、主要取引先から指導を受け、求められる製品を安全に着実に製造することが同社にとっての最優先事項となっており、ご相談者が正義感から「良かれ」と思って提案してきた改革プランも、社長の評価基準からは、高評価を得るものではなかった可能性が見えてきました。
但し、ご相談者の改革プランや発言や行動が、社長の評価基準から外れていたという可能性も、評価軸が明らかにされていない以上、推測の域をでません。
ご相談者の本来持つ正義感や正しいことを行いたいという姿勢は、現在所属する会社の事業内容や社風の中ではなかなか活かし難いことから、ご相談者の大切にすべき「人間性」を活かせる、そして会社からも求められる環境へ移ることを決断されました。
学生時代から飲食店をアルバイトをしていたことから、学校卒業後にチェーン店を運営している現在の会社に入社しました。現在勤めている会社は創業から10年を迎える居酒屋のチェーン店を運営しています。
仕事そのものは大変なことも多いですが、店舗の店長を任せられるなど、やりがいもある仕事だと思っています。
しかしながら、近年は複数運営している店舗の多くで売上げが減少し続けており、閉店せざるを得ない店舗も出始めています。
店舗の売上げの減少は様々な要因があると思いますが、創業者でもある現社長が一人で店舗のデザインからメニューまでを決めていることだと思っています。10年前に創業した頃の店舗モデルは、確かに当時としては斬新で次々に新店舗をオープンさせて来ましたが、10年経過した現在では、現社長が考案した店舗モデルではあまりお客さんが入らなくなってきています。
創業者であり現社長に、店舗モデル全体について意見を言える雰囲気でもなく、このまま同じ店舗運営を続けていても売上げは下がっていく一方だと思っています。
このような状況ですので、転職も何度も考えましたが、学生時代から飲食店での仕事経験しかなく、現在の会社では店長という立場で働いていることから、他社に移り、厳しい職場環境になってしまう可能性もあることから、行動に移せずにいます。
会社の将来性にはとても不安を感じますが、別の会社での労働条件や労働環境の変化に耐えられるかについて自信が持てません。
このご相談者の悩みは、現在の仕事にはやりがいも感じており比較的満足していましたが、会社全体のビジネスモデルについてはとても悲観的に捉えており、転職も含めて今後の方向について悩まれていました。
創業者が創業時の成功体験・成功モデルを、時代が変わりニーズが変化しているにも拘らず、捨てきれないことはよくあるケースです。
そして、創業者は自身が生み出したビジネスモデルを成功させているために、従業員の声をあまり聞き入れない方もおられます。
このような創業者で社長の下で働く従業員は、「もっとこうすれば良くなるのに」という思いを押し止めて過ごされていることが多く見受けられます。
ご相談者の場合は、創業者が考案した店舗モデルが時代のニーズと徐々に合わなくなっていることを、現場社員は気づいており、また店舗モデルがあまり有効ではなくなったことを裏付けるかのように売上げも減少しているにも関わらず、トップが現在のビジネスモデルを変える気がないことに、将来への不安が大きくなっておりました。
会社の将来に対する不安があり転職を考えておられましたが、転職を実際に行うことで、労働条件や職場環境が大きく変わることも考えられ、転職に関しては躊躇されておりました。
確かに慣れ親しんだ生活リズムや職場環境が変わることで大きなストレスを感じる人は少なくありません。ご相談者は店長というポジションで、ある程度の裁量権を持ち働いていたこともあり、転職し、スタッフの一人としてキャリアを再スタートさせることにも抵抗感が強かったです。
ご相談者の働くことへの望みは「現在のままの状況が続くこと」でした。現在と同じ会社で、店長というポジションで、同じ収入で、ずっと働けることでした。ご相談者は「変化」に対して、不安を覚えることが多いことが分かってきました。
ご相談者の希望は「現状維持」でしたが、ご相談者は今の生活や労働環境から「変わりたくない」と思っていても、ご相談者を取り巻く環境の方が、ご相談者の希望とは関係なく変化し続けてしまいます。
変わり続ける社会の中で、ご相談者の心を安定させるために、自身を取り巻く環境がどうしても変わってしまった時にでも、慌てることなく順応するため、「選択肢」を複数持って頂くことを提案しました。
ご相談者の不安の源泉は、生活環境や職場環境が変わり、その変化に順応できなかった時に、自身の生活が破綻してしまうことに恐れを抱いていることが明らかになっていきました。
このことから、とりあえず現在の会社が本当にダメになるまでは勤務し続けることとし、勤務している間に、いつでもご相談者が望んだタイミングで転職をできる能力を身につけることにしました。
不安の源泉は、自身が環境変化に順応できなかった際に、「さらに次に移れるか。転職に失敗したら次がないのではないか」という点にありました。
この不安を安定させるためには、いつでも「雇われる能力」=エンプロイアビリティを高めることが有効であることを納得頂き、飲食店の店舗運営以外の知識やスキルの習得を目指して頂きました。
飲食店以外の知識を蓄えることで、転職先の幅も広がり、環境変化に対して不安を抱く傾向が強かったご相談者も、「これがダメだった次に移ればよい」と考え方が前向きになり、結果的には、転職せずに現在の会社が本当にダメになるまで一生懸命働いてみることに決められました。
学校を卒業して「とりあえず」自分にとって身近な存在でしたスーパーマーケットに就職しました。
入社後は研修を受けてから、店舗に配属され、野菜部門の担当となりました。振り返りますと入社のきっかけは、スーパーマーケットは私自身も利用していて身近な存在であったことが入社の理由で、仕事に関してはほとんどイメージしたことはありませんでした。
毎日特に興味があった訳ではない野菜という商品と向き合っていても、一向に仕事へのやる気が上がることはありませんでした。
入社から半年で、「自分には合っていない」と思い退職し、直ぐに家電量販店に転職しました。
家電量販店への転職を決めた理由も、私自身がテレビやパソコンを転職先となった家電量販店で購入しており、身近で仕事のイメージがし易かったからです。
家電量販店では主に商品説明、つまり接客の仕事を行っていました。はじめの2~3ヵ月は、家電の新商品に真っ先に触れることができる楽しさがありましたが、半年を過ぎる頃には、毎日変わり映えしない店舗や説明する商品に飽きが生じてきました。
そして更に半年後に、この会社にこのまま勤めていても❝先がない❞と判断し退職、そして、次に中古車販売会社に転職しました。
20代の頃は、半年から1~2年で、仕事に対して興味が持てなかったり、ルーティーンの仕事に飽きてしまったりと、退職と転職を繰り返してきました。転職先が直ぐに見つからなかったことはありませんでした。
ところが、30代も半ばを過ぎた頃「また直ぐに転職先が見つかる」と思っていたところ、急に、履歴書の提出の時点で不採用になったり、面接まで進めても後日不採用通知が届くようになり、約10社から立て続けに「不採用」を突き付けられました。
これまで自身の「キャリア形成」ということを考えて退職と転職を繰り返してきた訳ではないこともあり、転職先がなかなか決まらない恐怖心で一杯です。どうしたら良いのでしょうか。
ご相談者は、20代では簡単に転職先を見つけられていたものの、30代半ばとなった現在、転職活動を行ってみたもののなかなか採用されず、就職先が決まらない悩みを抱えておられました。
まずは、学校を卒業してから初職を得て、その後の職務経歴を「棚卸」して頂きました。
〇退職に際して、どのような理由で決断されてきたのか。
〇転職先に関して、どのような点を重視して会社選びを行って来られたのか。
〇これまでの仕事経験で得られた知識や経験はどのようなことか。
「棚卸」によって明らかになってきたことは、
退職に際しては、仕事に対して深い興味関心を頂けなかったことが最も大きな理由。
転職先の決め方については、ご相談者の生活圏内で利用したことのあるお店や商品を取り扱ている会社であることを最も重視していたこと。
これまでの仕事経験で得られものは、「接客」の仕方であること。
といったことでした。
転職先の会社についても「棚卸」をして頂き、明らかになってきたことは、就職先の会社での仕事は、主に接客で、商品知識もあまり広さや深さを求められない、といった特徴が見えてきました。
次に、現在は約10社から不採用通知が届いている状況ではありましたが、転職先に求めること、働くことに求めることを、まとめていきました。
ご相談者がこれからの就職先に求めていることは、残業があまり多くなく、土日が休日で、30代の給与水準で、屋内で座ってできる仕事ということでした。
そしてこの条件に合致する会社の求人に応募していたところ、不採用通知が届くようになったようです。
さらに、応募した会社の内容を精査したところ、求人内容が事務職が多いことが分かりました。
ここで、10社程続いた不採用の理由が、ご相談者のこれまでの経歴と、応募した会社の求める人材とのミスマッチ(乖離)が見えてきました。
ミスマッチの要因は、事務職の経験がご相談に無かったことが第一に挙げられます。
企業の採用担当者がキャリア採用(中途採用)を行う際は、求める人材、特に求める知識やスキルを応募者が有しているかを確認します。
本件では、ご相談者は事務職への転職を希望されておりましたが、ご相談者の経歴からは事務職に求められる知識や能力を読み取ることが難しかったことがミスマッチに繋がっておりました。
そこで、ご相談者が働くことへの期待として挙げられた、労働時間、休日、給与水準、屋内での仕事、といった項目を叶えられる会社や仕事を、ご相談者のこれまでの職務経歴に則して、再検討していきました。
結果的には、事務職ではありませんでしたが、労働時間の管理もしっかりしていて、休日も定められた曜日で、屋内での作業、といった求人を出していた会社に再就職をされました。
ご相談者への働くことへの望みに挙げられていた給与水準だけが、期待通りにはならず、引き続き給与を上げるためにご相談者が取り組むべきことについて「対話」を続けていくことになりました。