望む生活と、望む生活を下支えする収入、その収入を得るための仕事、この生活、収入、仕事の3つが心地良く交わることを働く人は求めている。
望む生活のための収入、そして仕事、これらが心地良く交わる点が現在所属している会社において見出し難くなった時、別の会社で均衡点を探すことになる。
生活、収入、仕事の中で、転職を伴いながら均衡点を求める「きっかけ」となる要因について見てみたい。
エン・ジャパン株式会社が行った「『転職のきっかけ』実態調査」によれば、現在の会社から転職を考え始めた「きっかけ」は、
「やりがい・達成感を感じない」が最も多く40%、
次いで「給与が低い」36%、「人間関係が悪い」26%、「自分の成長が止まった、成長感がない」24%であった。
所属している会社から別の会社に移る最も大きな「きっかけ」となっているのは、「やりがい・達成感を感じない」という「仕事そのもの」に関連していることが分かる。
「仕事そのもの」の充実には、自ら目標を設定する余地があり、目標達成に向けて主体的に取組み、目標を達成してゆく、といった成功体験の積み重ねが欠かせない。
「やりがい・達成感を感じない」理由の一つには、働く人が主体的に目標を設定する余地が限られていたり、職務内容が狭く限定的で単純作業に陥ってしまっていることが考えられる。
限定的であった目標の設定や職務内容を広げたいという欲求を、転職を行い就労環境を変えることで満たしているのではないだろうか。
「自分の成長が止まった、成長感がない」といった転職の「きっかけ」についても、同様の理由から醸成される欲求と考えられる。
転職を考える2番目に多い「きっかけ」は「給与が低い」であり、望む生活を実現させるためには、その生活を成り立たせる程度の収入を確保する必要があり、その収入が得られる可能性の高い会社に移ることは自然な傾向といえる。
転職を伴いながら生活、収入、仕事が心地良く交わる点を模索する中で、転職の「きっかけ」として最も大きな要因は「やりがい・達成感を感じない」こと、つまり「仕事」に関連する「きっかけ」、次いで「給与が低い」こと、つまり「収入」関連する「きっかけ」であった。
ここで「望む生活」に関連した転職の「きっかけ」を見てみると、
「残業・休日出勤など拘束時間が長い」が19%、「結婚・出産・介護など家庭の事情」が7%となっている。
「残業・休日出勤など拘束時間が長い」ことが転職の「きっかけ」となっているのは、20代に多く24%と他の年代に比較して「きっかけ」の大きな要因の一つにあげられている。
「結婚・出産・介護など家庭の事情」については、30代が他の年代よりも多く10%の人が「きっかけ」にあげている。
伝統的な勤労観では、「仕事」を最も重要なものとして取り扱うように促され、「収入」は長期勤続の結果として上昇するものとされ、「生活」は「仕事」に傾倒した上で守られるものとの認識が漂っていた。
現在では、望む生活が個々人にあり、望む生活のために収入を得る必要があり、生活と収入の観点も踏まえた仕事、といった観念が広がっている。
生活、収入、仕事の心地良い均衡点を、企業を横断しながらキャリアを通じて模索し続ける働き方が一般化しつつあるといえる。
【引用・参考文献】
・「『転職のきっかけ』実態調査」エン・ジャパン株式会社(2020)
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