働く人の「支出」の現状

単身者、二人以上の世帯ともに「服と履物」「教育娯楽」への支出額は減少している。

働く人それぞれに理想とする望む生活があり、その理想的な生活を実現するための収入と仕事を考えなければならない。
「理想的」な生活とはいえ、個人を取り巻く経済や社会環境等からの一定程度の制限を受けざるを得ない。
個人を取り巻く社会環境から一定程度の影響を受けることを前提とした「理想」的な生活と収入と仕事を考える必要がある。

理想的な生活を成り立たせるため、日本における「収入」と「支出」の現状について見てみたい。
働く人の「収入」については、
国税庁公表による「民間給与実態調査結果」によれば、
2020年12月31日現在、1年を通じて勤務した給与所得者は5,245万人、
その平均給与は433万円であった。
その内、
男性は3,077万人、平均給与は532万円、
女性は2,168万人、平均給与は293万円であった。

さらに20年前の2000年12月31日現在では、1年を通じて勤務した給与所得者は4,494万人、
その平均給与は461万円であった。
その内、
男性は2,839万人、平均給与は567万円、
女性は1,655万人、平均給与は280万円であった。

日本においては20年間で、1年を通じて勤務した給与所得者は751万人増加した一方(男性が238万人増加、女性が513万人増加)、
平均給与は28万円減少した(男性が35万円減少、女性が13万円増加)。

ちなみに常用労働者1人平均総実労働時間数は、
2000年は1,859時間、
2020年は1,685時間、
と20年間で総労働時間は174時間減少している。

次に「支出」の現状について見てみよう。
総務省の「家計調査報告」によれば2020年度、
単身世帯(平均年齢58.5歳)の1ヵ月平均支出は150,506円、
二人以上の世帯(平均世帯人員2.95人、世帯主の平均年齢59.7歳)の1カ月の平均支出は277,926円であった。

単身世帯がどのようなコトやモノに支出しているのかを見てみると、
食料41,373円
住居20,950円
光熱・水道11,687円
家具・家事用品5,393円
被服及び履物4,910円
保健医療7,129円
交通・通信18,310円
教育2円
教養娯楽15,867円
その他の消費支出24,888円となっている。

一方、二人以上の世帯の支出項目を見てみると、
食料80,198円
住居17,374円
光熱・水道21,836円
家具・家事用品12,708円
被服及び履物9,175円
保健医療14,296円
交通・通信39.972円
教育10,293円
教養娯楽24,987円
その他の消費支出47,088円、
となっており、単身世帯に比べると住居以外の項目で全て支出が大きくなっているが、特に教育費について二人以上の世帯では支出のウェイトが高くなっている。

2000年の1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は461万円であったが、2020年の平均給与では433万円と28万円減少している。
支出についてはどうだろうか。
単身世帯の1年間の平均支出金額、
2000年は2,179,370円、
2020年は1,806,076円、
と20年間で373,294円(17.1%)の支出が減少している。

支出項目別に見てみると、
「食料」2000年568,152円→2020年496,472円(71,680円、12.6%の減少)
「住居」2000年306,626円→2020年251,397円(55,229円、18.0%の減少)
「光熱・水道」2000年113,699円→2020年140,239円(26,540円、23.3%の増加)
「家具・家事用品」2000年59,368円→2020年64,714円(5,346円、9.0%の増加)
「被服及び履物」2000年114,711円→2020年58,914円(55,797円、48.6%の減少)
「保健医療」2000年56,866円→2020年85,544円(28,678円、50.4%の増加)
「交通・通信」2000年276,805円→2020年219,717円(57,088円、20.6%の減少)
「教育」2000年126円→2020年29円(97円、77.0%の減少)
「教養娯楽」2000年313,527円→2020年190,399円(123,128円、39.3%の減少)
「その他の消費支出」2000年369,490円→2020年298,650円(70,840円、19.2%の減少)となっており、
20年間で大きく支出が減少したのが「被服及び履物」(48.6%の減少)、「教養娯楽」(39.3%の減少)、「交通・通信」(20.6%の減少)であった。
一方で、大きく支出が増加したのが「保険医療」(50.4%の増加)、「光熱・水道」(23.3%)であった。

単身世帯における大きく減少した支出項目が「被服及び履物」と「教養娯楽」であったことは、単身者の生活における「楽しみ方」が変化していることが推察される。

さらに二人以上の世帯の1年間の平均支出金額について見てみると、
2000年は3,807,937円、
2020年は3,335,114円、
と20年間で472,823円(12.4%)支出が減少している。

同じく支出項目別に見てみると、
「食料」2000年973,680円→2020年962,373円(11,307円、1.2%の減少)
「住居」2000年246,334円→2020年208,488円(37,846円、15.4%の減少)
「光熱・水道」2000年259,546円→2020年262,034円(2,488円、1.0%の増加)
「家具・家事用品」2000年139,148円→2020年152,497円(13,349円、9.6%の増加)
「被服及び履物」2000年206,742円→2020年110,097円(96,645円、46.7%の減少)
「保健医療」2000年137,732円→2020年171,554円(33,822円、24.6%の増加)
「交通・通信」2000年438,748円→2020年479,658円(40,910円、9.3%の増加)
「教育」2000年167,089円→2020年123,514円(43,575円、26.1%の減少)
「教養娯楽」2000年403,055円→2020年299,844円(103,211円、25.6%の減少)
「その他の消費支出」2000年835,862円→2020年565,055円(270,807円、32.4%の減少)となっており、
二人以上の世帯における支出も単身世帯と同様に、大きく減少した支出は「被服及び履物」(46.7%の減少)、「教養娯楽」(26.1%)であるが、二人以上の世帯では「教育」に対する支出もその額を減少させている(25.6%の減少)。

働く人の「理想」とする生活は個々に異なる。
単身世帯を望む人もいれば、家庭を築くことを望む人もおり、それは個人の選択の自由といえる。
どのようなモノやコトに幾ら支出することで望む生活が実現できるか、から得たい収入やそのための仕事を多種多様な選択肢から選んで行くことも、個人化の進む社会における職業選択の在り方と考える。
—望む生活を実現するための収入と仕事。

【引用・参考文献】
・「令和2年分 民間給与実態統計調査」国税庁(2021)
・「平成12年分 民間給与実態統計調査」国税庁(2000)
・「早わかり グラフでみる長期労働統計」独立行政法人労働政策研究・研修機構(2021)
・「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」総務省(2021)
・「家計調査(家計収支編)時系列データ(総世帯・単身世帯)」総務省(2021)

—全ての働く人のためのチャット仕事悩み相談