働く人の「収入」の現状

望む生活とその生活を実現するための収入は一人ひとり異なる。選択するのは個人。

学校を卒業して、新卒者として会社に入り、定められた定年まで一つの会社で勤め上げる、そのような伝統的・理想的とされたキャリア形成は、過去のものとなりつつある。
現在は、学校を卒業し、その後のキャリア形成は多種多様な選択肢から、個人が自由に決める。
多様な選択肢の中から、個々人が望む生活を営むために必要とされる収入を得られる仕事や職業を選択することになる。
仕事や職業の選択は、個々人の望む生活と必要とされる収入から絞り込まれていく。
大切なことは、個々人の望む生活の価値基準は100%個々人に委ねられており、個人を取り巻く環境から発せられる「声」に❝本来は❞影響を受けないものである。他者の自由な生き方を互いに尊重することが、自由で平等な社会といえる。

個々人が望む生活を営むために必要とされる「収入」の現状について見ていきたい。
望む生活を営むため必要とされるのが収入であり、好ましい収入の水準は個々人の望む生活に準拠する。収入の多寡そのものは、望む生活の側面からは社会情勢の一つの参考値に過ぎない。

国税庁公表による「令和2年分 民間給与実態調査結果」によれば、
2020年12月31日現在、1年を通じて勤務した給与所得者は5,245万人、
その平均給与は433万円であった。

1年を通じて働いた5,245万人、その内、
男性は3,077万人、平均給与は532万円、
女性は2,168万人、平均給与は293万円であった。

全業種の平均給は433万円、業種別に平均給与を見てみると、
電気・ガス・熱給与・水道業が715万円、
金融・保険業が630万円、
情報通信業が611万円、
建設業が509万円
学術研究・専門・技術サービス業・教育・学習支援業が503万円、
製造業が501万円、
医療・福祉が397万円、
卸売業・小売業が372万円、
サービス業が353万円、
宿泊業・飲食サービス業が251万円となっている。

全世代の平均給与は433万円、さらに男性の平均給与は532万円、女性の平均給与は293万円、年齢階層別に見てみると、
「20~24歳」の平均給与は260万円、男性平均は277万円、女性平均は242万円、
「25~29歳」の平均給与は362万円、男性平均は393万円、女性平均は319万円、
「30~34歳」の平均給与は400万円、男性平均は458万円、女性平均は309万円、
「35~39歳」の平均給与は437万円、男性平均は518万円、女性平均は311万円、
「40~44歳」の平均給与は470万円、男性平均は571万円、女性平均は317万円、
「45~49歳」の平均給与は498万円、男性平均は621万円、女性平均は321万円、
「50~54歳」の平均給与は514万円、男性平均は656万円、女性平均は319万円、
「55~59歳」の平均給与は518万円、男性平均は668万円、女性平均は311万円、
となっており、男性が年齢に比例して給与が上昇しているのに対して、女性の平均給与は年齢に比例せず300万円前半で推移している。このことは伝統的な日本的雇用慣行と報酬体系が現在でも維持されていることを示している。働く人の働くことへの志向は変化し続けているが、一度定着した雇用慣行と報酬体系が変わるためには長い時間を要することが見てとれる。

伝統的な日本的雇用慣行である長期勤続、年功制賃金が企業において今尚維持されていることを裏付けるかのように、勤続年数別の給与水準を見てみると、
勤続「1年~4年」の平均給与は315万円、男性平均は385万円、女性平均は244万円、
勤続「5年~9年」の平均給与は371万円、男性平均は456万円、女性平均は270万円、
勤続「10年~14年」の平均給与は446万円、男性平均は538万円、女性平均は316万円、
勤続「15年~19年」の平均給与は508万円、男性平均は607万円、女性平均は342万円、
勤続「20年~24年」の平均給与は575万円、男性平均は664万円、女性平均は386万円、
勤続「25年~29年」の平均給与は646万円、男性平均は725万円、女性平均は432万円、
勤続「30年~34年」の平均給与は662万円、男性平均は743万円、女性平均は431万円、
となっており、男女ともに勤続年数に比例して給与平均も伸びている。但し、勤続年数に比例して伸びる平均給与も男女で伸び率が大きく異なることは日本的雇用慣行の課題といえる。

わが国において1年を通じて勤務した給与所得は5,245万人、平均給与別に構成比を見てみると、
「100万円以下」4,420,000人、全勤務者の8.4%、
「100万~200万円以下」7,226,000人、〃13.8%
「200万~300万円以下」8,142,000人、〃15.5%
「300万~400万円以下」9,130,000人、〃17.4%
「400万~500万円以下」7,643,000人、〃14.6%
「500万~600万円以下」5,366,000人、〃10.2%
「600万~700万円以下」3,395,000人、〃6.5%
「700万~800万円以下」2,313,000人、〃4.4%
「800万~900万円以下」1,453,000人、〃2.8%
「900万~1,000万円以下」952,000人、〃1.8%
「1,000万~1,500万円以下」384,000人、〃0.7%
「2,000万~2,500万円以下」124,000人、〃0.2%
「2,500万円~」145,000人、〃0.3%
となっており、「300万~400万円以下」9,130,000人が最も多い構成比となっている。

望む生活のために必要とされる収入は、個々人の理想とする生活によって異なる。
望む生活を営むための「手段」が収入と仕事である。
より適切な「手段」を選択するための現状分析に不可欠な基礎的データを読み解くことは、働く人にとって必要といえる。

【引用・参考文献】
・「令和2年分 民間給与実態統計調査」国税庁(2021)

—全ての働く人のためのチャット仕事悩み相談