転職で53.4%が「満足」という結果も

転職における賃金の満足度は若干低くなる傾向

学校を卒業して、会社に入り、多くの働く人が70歳近くまでの長期のキャリアを歩む。
キャリアの捉え方は変化を続けており、これまで「理想的」と捉えられてきた新卒者として入社した会社で定年まで勤め上げ、キャリアを終えるモデルから、企業を横断しながらキャリア形成を行うモデルが「一般化」しつつある。
実際に、一度でも退職経験のある働く人の割合は64.5%となっている。

では、企業横断的なキャリア形成は、働く人にとって「満足」をもたらしているのであろうか。
厚生労働省「令和2年転職者実態調査」によれば、転職を行った働く人の「現在」の会社について、
「満足」しているのが53.4%(「満足」21.4%、「やや満足」32.0)、
「不満足」が11.4%であり(「やや不満」8.8%、「不満」2.6%)、
半数を超える転職者が現在の会社に「満足」し、転職先に不満を抱く人が少ないことが分かる。

さらに、転職先のどのような点に「満足」しているのかを見てみると、
現在の「仕事内容・職種」に満足しているのは69.2%(「満足」30.7%、「やや満足」38.6%)であり、
転職を行うことで「仕事内容・職種」に関しては高い割合で「満足」を得られることが分かる。
ちなみに、現在の「仕事内容・職種」に不満足であるのは8.7%と1割に満たない。
「仕事内容・職種」を軸に据えて企業横断的にキャリア形成を行うことは、キャリアにおける満足度を高めるケースが高いと考えられる。転職により約7割が「仕事そのもの」の満足度が高められた調査結果になったことは、働く人にとっては伝統的なキャリア形成(新卒者として入社した企業で定年までの全ての働く期間を過ごす)だけが既に「理想的」ではなく、主体的に企業を横断することで充実したキャリア形成を行える余地が大きいことを示唆している。

また現在の「労働時間・休日・休暇」について満足しているのは62.3%(「満足」34.6%、「やや満足」27.7%)、
「通勤の便」に満足しているが69.0%(「満足」40.4%、「やや満足」28.6%)、
「人間関係」に満足しているが59.7%(「満足29.9%、「やや満足」29.7%)
と労働条件についても満足度が高まる結果となった。

一方で、転職によって現在の勤務先からは「満足」を得られる割合が比較的低かったのが、
「賃金」であり、「満足」が46.6%(「満足」15.7%、「やや満足」30.9%)、「不満足」が27.1%(「やや不満」18.2%、「不満」9.0%)と他の項目に比較して満足度が低い結果となった。
転職先の「役職」についても「満足」34.7%(満足」19.4%、「やや満足」15.2%)に留まった。

働く人が転職を行い、新たな勤務先の「仕事内容・職種」や「労働時間・休日・休暇」の満足度が高く、「賃金」や「役職」に対する満足度が比較的低かったことは、現在の勤務先(転職先)を選んだ「一番の理由」と整合する。
現在の勤務先を選んだ一番の理由は、
「仕事の内容・職種に満足いくから」18.8%、
「自分の技能・能力が活かせるから」18.3%、
「労働条件(賃金以外)がよいから」13.5%、
「転勤が少ない、通勤が便利だから」9.3%、
と望む仕事内容・職種や自身が活かしたい技能・能力を基軸に据えて、転職することで、高い割合で満足度が高い仕事・会社に巡り合えていることが分かる。

一方で、現在の勤務先を選んだ一番の理由として、「賃金が高いから」をあげた割合7.0%と少数に留まっている。
このことから、現在の日本における転職について、より高い賃金を得るための選択としては一般化されていないと思われる。

新卒者として入社した会社に長期間勤務し続けることで得られるものは計り知れないが、一方で、自身が望む「仕事内容・職種」を基軸に据えた企業横断的なキャリア形成については、仕事の満足度・充実度の面を高めることが期待される。
働き方、「理想的な」キャリア形成は変わり続けている。

【引用・参考文献】
・「全国就業実態パネル調査2021」リクルートワークス研究所(2021)
・「令和2年転職者実態調査の概況」厚生労働省(2021)

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