仕事に満足していても、不安な今後のキャリア

今後のキャリアを見通すことが難しい時代にいかに働き、いかに生活するか

リクルートワークス研究所『全国就業実態パネル調査2021』によれば、これまで退職経験をしたことのある働く人は、64.5%であった。長いキャリアの中で、退職と退職に伴い新たな生活を始めることは「一般的」なことになっている。
退職理由については「人間関係への不満」、「賃金への不満」、「仕事内容への不満」、「会社の将来性や雇用安定性への不安」、「労働条件や勤務地への不満」など、多岐に亘っているため「一般的には」といった言及は難しい。

現在の「一般的」となっている転職を含むキャリア形成の現状をもう少し明らかにしてみたい。同調査では、直近1年間における「仕事」について詳細に尋ねている。
6割以上が長いキャリアの中で一度は転職を経験している現在、働く人はどのような意識を「仕事」に抱いているのだろうか。

「仕事のそのものに満足しているか」について、正規社員の場合、
「あてはまる」(=満足している)36.7%、
「あてはまらない」(=満足していない)26.1%、
と仕事そのものに満足している割合の方が高い結果になっている。
(「あてはまる」5.6%、「どちらかというとあてはまる」31.1%、「あてはまらない」10.1%、「どちらかというとあてはまらない」16.0%)

転職する傾向が強い若年層について見てみても、「25~34歳」の場合、
「あてはまる」(=満足している)は36.7%、
「あてはまらない」(=満足していない)は26.7%、
とやはり仕事そのものに満足している割合の方が高い。
(「あてはまる」5.7%、「どちらかというとあてはまる」31.0%、「あてはまらない」10.3%、「どちらかというとあてはまらない」16.4%)

ここから「仕事そのもの」については、不満足よりも、満足している人の割合の方が高いことが分かる。

次に、会社・仕事選びの際に重視されている「自分が成長できるか」の点について、「仕事を通じて『成長している』という実感を持っているか」について尋ねたところ、正規職員の場合、
「あてはまる」(=成長を実感している)は30.0%、
「あてはまらない」(=成長を実感していない)は29.9%、
と僅差ではあるが、仕事を通じて「成長をしている」という実感を持っている人の割合が高い。
(「あてはまる」4.3%、「どちらかというとあてはまる」25.7%、「あてはまらない」11.8%、「どちらかというとあてはまらない」18.1%)

仕事を通じて「成長をしている」という実感を持っているかについて「25~34歳」の場合、
「あてはまる」(=成長を実感している)は36.4%、
「あてはまらない」(=成長を実感していない)は27.2%、
と「成長」を実感している割合が更に高くなっている。
(「あてはまる」6.1%、「どちらかというとあてはまる」30.3%、「あてはまらない」10.8%、「どちらかというとあてはまらない」16.4%)

ここから仕事を通じて「成長」を実感している若年層は、実感できていない人より多い傾向であることが分かった。

現在の働く人は、仕事そのものについて不満足を抱えている人よりも満足感を得ている人の割合の方が高く、仕事を通じて成長を感じられない人よりも成長を実感できている人の割合の方が高い傾向であることが分かった。
それでは「今後のキャリアの見通しが開けている」かどうかを見てみたい。
「今後のキャリアの見通しが開けている」かについて(正規職員の場合)、
「あてはまる」(=今後のキャリアの見通しが開けている)は16.3%、
「あてはまらない」(=今後のキャリアの見通しが開けていない)は41.6%、
と今後のキャリアの見通しが開けていない人の割合の方が大きい結果となった
(「あてはまる」2.2%、「どちらかというとあてはまる」14.1%、「あてはまらない」18.8%、「どちらかというとあてはまらない」22.8%)

「今後のキャリアの見通し」については、「45~54歳」が、
「あてはまる」(=今後のキャリアの見通しが開けている)は12.8%、
「あてはまらない」(=今後のキャリアの見通しが開けていない)は44.0%、
とキャリアの見通しが開けていない割合が最も大きい世代となった。
(「あてはまる」1.4%、「どちらかというとあてはまる」11.4%、「あてはまらない」23.8%、「どちらかというとあてはまらない」20.2%)

ここから現在の働く人にとっては「今後のキャリア」を見通すことが難しい環境であることが示唆される。

仕事そのものについて満足感を得られていて、さらに仕事を通じて成長を実感できていても、今後のキャリアが見通すことが難しい時代において、望む生活と仕事の均衡点を見つけることもまた難しい時代と言えるのではないだろうか。

【引用・参考文献】
・「全国就業実態パネル調査2021」リクルートワークス研究所(2021)

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