リクルートワークス研究所『全国就業実態パネル調査2021』によれば、これまで退職経験をしたことのある働く人は、64.5%であった。6割を超える働く人が退職を経験し、そして新たな生活をスタートさせている。
一度就職した会社をどんな理由であれ辞める、退職することをもう少し見てみると、
退職経験がない、つまり退職回数「0回」は働く人全体では32.5%、
「1回」17.1%、「2回」14.4%、「3回」11.6%、「4回」6.2%、「5回」5.9%、「6回~10回」7.2%、「11回以上」2.1%となっており、複数回の退職を経験している人も多いことが分かる。
年代別に見てみると、退職をしたことがない働く人の割合が、年齢を重ねるごとに減少している。
現在、長いキャリアの中で、退職と新たな生活を始めることは「一般的」なことになっている。
退職をしたことのない割合、「15~24歳」83.0%、「25歳~34歳」58.5%、「35歳~44歳」43.1%、「45歳~54歳」39.2%、「55歳~64歳」33.6%。35歳以上は、退職を経験していない人の方が少なくなっている。
キャリア形成を考える上で、退職し、次の生活をスタートさせるにあたり、現在の同じ業種間で移動するか、それとも別の分野に挑戦するかで、大きく生活の質が異なってくる。
同調査においては、正規社員の場合、同業種間移動(転職)の割合は47.1%、異業種間移動(転職)が33.9%となっており、同じ業種間で移動(転職)を行う働く人の割合の方が若干多いことが分かる。
さらに、職種について見てみると、
同業種内で「同職種」移動(転職)をした人は21.7%、
同業種内で「異職種」移動(転職)は6.8%、
異業種間で「同職種」移動(転職)は15.2%、
異業種間で「異職種」移動(転職)は24.8%、
であり、異業種で更に異なる職種に転職する人の割合が最も高くなっている。
様々な業種且つ多様な職種の経験を積むことが、特別なキャリア形成ではなくなってきている。
また、転職後1年目の賃金については、正規社員の場合、
転職前に比べて10%以上「上がった」人の割合は28.6%、
一方、転職前に比べて10%以上「下がった」人の割合は33.5%、
と若干ではあるが「下がった」人の割合の方が高い。
しかしながら、「15歳~24歳」では、
転職前に比べて10%以上「上がった」人の割合は38.2%、
一方、転職前に比べて10%以上「下がった」人の割合は27.4%、
と転職することで賃金が上がっている人の割合の方が高い結果となっている。
「25歳~34歳」についても転職によって賃金が上昇している人の方が多くなっている。
さらに、転職後2年目の賃金に至っては、
転職前に比べて10%以上「上がった」人の割合は46.0%、
一方、転職前に比べて10%以上「下がった」人の割合は24.8%、
と「上がった」人の割合の方が、「下がった」人の割合を逆転する結果となっている。
ここから転職することで賃金が増加する可能性も高まっていることが分かる。
最後に、退職理由について見てみると、正規社員の場合、
「人間関係への不満」14.8%、
「賃金への不満」12.0%、
「仕事内容への不満」11.9%、
「会社の将来性や雇用安定性への不安」10.0%、
「労働条件や勤務地への不満」9.8%、
となっており、突出して高い割合の退職理由はなく、個人が多種多様な退職・転職理由と動機を有していることが分かる。
法律も改正され、今後は70歳までの長きに亘るキャリア形成が求められる時代となる。
新卒者として入社した会社で、生涯に亘るキャリア形成を成すモデルは既に一般的ではなくなっている。
複数の企業で、複数の職種を経験しながら、キャリア形成を行うことが「普通」である時代においては、幅広く「働くこと」について知見を有する者と相談しながら、自己の望む生活の中で労働をどのように位置づけるかを探ることが求められていると言えよう。
一企業内に留まらず、幅広く「働くこと」の専門家に気軽に相談できる仕組みが求められている。
【引用・参考文献】
・「全国就業実態パネル調査2021」リクルートワークス研究所(2021)
—全ての働く人のためのチャット仕事悩み相談